曽根幸明氏

オブリガート

「オブリガート」とはポルトガル語で「ありがとう」と言う意味ですが、いつしか、ジャズの世界ではヴォーカルのおかず、つまり、歌と歌の間をうめるフレーズを指して言うようになったのは、たしか戦後ジャズブーム以来だったと思います。
 簡単な様で、これが非常にむづかしく、又、ピアニストの性格がとてもよく表われるしろもので、目立ちたがり屋さんのピアノは歌手が歌っている時も、歌っていない時も、これでもか、これでもかと弾きまくり、歌の邪魔をしてしまう事もあり、あまり上手いピアニストとは言えないのです。
 さりとて和音だけを押さえて、余りおかずの無いピアニストも居て、中には弾けば弾けるのに、歌手が下手だと、伴奏する気にもなれず馬鹿にして適当に弾いている人も居ます。
 私も1955年位からジャズを歌っていたので日本中、ありとあらゆるピアニストに伴奏して貰いましたが、それぞれ一長一短あって、上手過ぎたり、和音を知らな過ぎたり、上手いんだけど、ぶっちょう面で弾いてて、今ひとつ気分が乗れなかったり、仲々名ピアニストと言う人に逢えなかったのですが、大原やすとさんに会ってからは、雰囲気作りが上手く、オブリガートもやり過ぎず、間も開き過ぎず、歌手にとってこんなに歌い易いピアニストは他には居ません。伴奏に遊び心もあって、何事にもフィーリングを重視する私の歌にはピッタリで、とても楽しくお仕事をさせて貰い、とても感謝しています。
 これからも益々、その巾を広げて御活躍される事を心からお祈りする次第です。

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